ポルボロンの記憶

2023年1月18日

ポルボロンは、きつね色に炒った小麦粉に粉糖とアーモンド粉と少々のシナモンとバター(本来はラード)を加えて整形した、スペイン アンダルシア地方の祝い菓子です。

「あらかじめ粉を炒る」という独特の製法のため、一般的なクッキーと比べてグルテンが少なくとても柔らかいこの焼き菓子は、口にするとサラサラほろッと溶けて消えます。この独特の食感もまた楽しいお菓子です。


「何故ポルボロンを?」とお尋ねいただくことが時々あるため、今回は当店のポルボロンの由来についてお話しします。

店主がこのお菓子に出会ったのは、中学生の頃。
地元の高校のバザーで売られていたものが最初でした。
思春期らしく生真面目で、本の虫ゆえ一人でいることも多く、からかわれやすい生徒でした。それが嫌で、「高校は男子のいない女子校に行く!(※)」と決めていた私は、志望校見学を兼ねて行ったバザーでポルボロンを知りました。
(※今になってみると、他人をからかう幼さも、壁を作る頑なさも、性別ではなくそれぞれの性根に基づくものですが…時は流れるもの、とも思います。蛇足。)

当時、地元の和菓子屋さん(卒業生さんの生家)が作られていたポルボロンは、端正な四角い箱に入れられ専用のブースで販売されていました。
聞けば、バザー名物のお菓子で、毎年とても好評とのこと。
一箱買って食べてみると、粉砂糖で覆われた素朴な見た目とは裏腹に、ホロッとした口溶けは繊細で、シナモンの香りが爽やかで、とても美味しい。うわぁ。こんなお菓子、初めて食べた。と、衝撃でした。
なお、母は私がバザーに行くより前からこのお菓子のことを知っていて、後にずいぶん驚きました。(なにぶん●十年以上昔のこと。情報源も今よりずっと限られる時代。自分の食いしん坊DNAの源流を見た気がしたものです。)

そして次の春無事に入学し、バザーは毎年の恒例行事になりました。在校生なのを幸い、事前予約し。自分のクラスの店番の隙間を縫って買いに行き。バザーが終わると自前の紙袋に数個重ねて抱えて帰る。という三年間でした。(自分と母の分は言うまでもなく、友人知人に頼まれて、年々袋は重くなっていた気がします。これもまた三つ子の魂。)

そして三年生の頃。ダメで元々。と、当時仲の良かった先生に作り方をお尋ねしたところ、笑顔で教えて下さいました。
先生方がご自分たちで作っていらした頃のレシピなので、当時和菓子屋さんが作られ販売されていたレシピと同じかどうかは分かりませんが、「私の国のお菓子を気に入ってくれてありがとう」と言ってくださった時の朗らかなお顔は、今も嬉しく憶えています。

当店のポルボロンは、その頃のレシピがルーツです。
これからも毎年作り続けていきたい、大切なお菓子です。
今年は1月末までご用意する予定です。(1月の通販にも入ります。)
お楽しみいただけましたら幸いです。



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