雨予報でしたがポカポカ薄曇りで散歩日和の五月第二日曜日。
待ちに待った五月場所が始まり、初日のテレビ観戦を終え、今も気持ちがどこかフワフワと落ち着かないままにこの記事を書いています。
(余談になりますが、湊川親方の解説が大好きです。今場所も楽しみです。先日のどすこい研(再放送)も、とても嬉しかったです…!)
…このとおり、もともと好きなことを語り始めると止まらなくなりがちな性分なのですが、楽しんでくださる常連さん方にも背中を押していただき、今月はブログ界の端っこで素材への愛をひとつずつ綴りたいと思います。
もしよろしければ、お時間に余裕のある時にお付き合いくださいませ。
さて、本題です。
今月の小話ブログでは、店で使用している材料についてお話しします。
初日の本日は、バターについて。当店ではレシピに合わせて、主に三種類のバターを使用しています。
それぞれに特色のあるバターなので、レシピによっては複数の種類を組み合わせて使っていますが、今回は私的な印象とレシピの中でそのバターの比重が高いものとを組み合わせてご紹介してまいります。
・カルピスバター
真っ白でなめらかで癖のない、そのまま食べてもおいしいバターです。
文字どおりミルクをそのまま固めたような、素直で柔らかな甘さのある味わいです。初めて口にしたときの驚きと感動は、今も忘れられないほど。
米粉入りクッキーなどの全体をやさしい味わいに仕上げたいお菓子や
ジェノワーズ(スポンジケーキ)、紅茶クッキーや抹茶クッキーなど、
他の素材の風味を前に出したいお菓子に使用しています。
・カルピス発酵バター
真っ白でなめらか。穏やかでやさしい味わいは、無発酵バターと同じく。
個人的な印象としては、香りが無発酵よりスッキリしていて、後口にふわっとやさしい酸味が届きます。爽やかで凛とした風味がとても好きです。
一番好きな味わいなので、年々自然と当店のメインバターになりました。
スコーンやホットビスケット、軽めのクッキー生地やタルト生地、
ココナツケーキ、抹茶やココア入りのバターケーキなどに使用します。
・よつ葉発酵バター
黄色みが強く、酸味も強め。見た目も香りも味わいも濃厚なバターです。
計量中から「吾輩はバターである。」というパワーがゴンっと伝わってくる力強さなので、合わせる素材やバランスも、毎回ちょっと考えます。
フィナンシェやマドレーヌのようにバターの風味を主役にしたいときや、
重めのバターケーキやフルーツケーキ、ビスコッティなど個性の強い素材と組み合わせるときに使用しています。
当たり前かもしれませんが、バターの種類や組み合わせのバランスによって、同じレシピでも全然違う味わいになります。
試作の初期~中期などには価格的な理由で別のバターを使用していますが、油脂としての配合バランスは同じくらいでも味わいが随分違うので、自分のお菓子のおいしさに占める素材の力の大切さを毎回ひそかに実感(痛感)しています。
お菓子は、食品の中でも嗜好品として扱われることの多い食べものです。
「おいしい」と感じる味の好みに理由はあれど、正解はないのかもしれません。私自身ゴールが分からず迷うことも、しばしばです。
けれど、「おいしい」と感じた好きな食材をスタートにして作りたいお菓子のレシピを考えることは、いつもとてもワクワクします。
そして、好きな食材をもとに自分が「おいしい」と思える味のお菓子が出来たとき、
食べてくださった方に「おいしい」と思っていただけたときは、毎回のようにとても新鮮な嬉しさがあります。
今までも、これからも。
シンプルなお菓子も、素朴なお菓子も、凝ったお菓子も。
素材のおいしさを大切にして、口にした時に素直に「おいしい」と嬉しく思えるお菓子を目指して、作っていきたいと思っています。
もしお好みに合いましたら、お楽しみいただけましたら幸いです。