ちょうど半分。のお菓子

2023年6月28日

今朝のニュースで、茅の輪くぐりの様子が流れていました。
茅の輪くぐりは、6月末の夏越の祓(六月祓)の風物詩。
夏越の祓は、一年の前半の穢落としと後半の息災を祈願する神事です。
この夏越の祓にまつわるお菓子は土地ごとに様々ありますが、
今月の喫茶室でお出しした「水無月」も、そのひとつです。

水無月。とは、言わずもがな、旧暦六月の呼び名のひとつ。
この名前をもつお菓子があることを知ったのは、学生の頃でした。

高校生の頃の私は、名鉄岐阜駅地下の「虎屋ういろ」のお店に寄り、
時々ういろの切れ端※を買って帰るのが楽しみでした。
(※お小遣いを貯めてお目当ての一本を棹でちゃんと買えた時は
とても嬉しかったことを、今でもハッキリと憶えています。)

水無月を最初に知ったのは本の中でのことだったと思いますが、
なにぶん色気より食い気の女子高生。当時は由来への関心よりも、
「ウイロウの上に甘納豆?…ぜったい美味しい!」という、単純かつ
食いしん坊な理由から惹かれ、案の定、大好きなお菓子になりました。

好きなものについて知りたくなる性分は今も昔も変わらぬもので、
花びら餅・菱餅・ちまき・水無月・若鮎・索餅・琥珀糖などなど…
和菓子を好きになるたび、そのお菓子の由来と歳時の関わりを知って、
またいっそう和菓子の世界を好きになっていったようにも思います。

「作る」方向に意識が向かなかったのは、美味しい和菓子屋さんが
身近にたくさんあり、食べることで満足していたからかもしれません。
(子供の頃は、洋菓子屋さんより和菓子屋さんの方が身近でした…。)

閑話休題。

氷を模した白い生地の上に、厄除けの赤い豆をちらして蒸し上げた
「水無月」は、主に西の方で夏越の祓の時期に作られている和菓子です。

当時の私の活動範囲内ではあまり見かけないお菓子でしたが、
最近はこの辺りでも作られるお店が増えてきたように思います。

和菓子屋さんの店頭に「水無月」の貼り紙を見つけると、つい
フラフラと惹き寄せられてしまうのは今も昔も変わりませんが、
好きな和菓子屋さんがお店を閉められることが重なった頃から、
自作するようになった好物和菓子のひとつが、この「水無月」でした。

様々なレシピがありますが、私の作る水無月は、
白玉粉・小麦粉・蜜(砂糖と水を煮溶かしたもの)を合わせて
練り上げ、型に流して甘納豆を散らし、蒸して冷やして切って完成です。

※甘納豆は、大好きな徹明通の岡女堂さんの大納言と青えんどうを。
白玉粉・小麦粉・砂糖(てん菜グラニュ)は国産のものを使います。

「四角い氷」を「ちょうど半分」に切った「三角形」は、
氷らしさとともに、夏越の祓(一年の半分)も表している。
と知ったのは、自分でこのお菓子を作り始めてからのことでした。

だからこそ、「水無月」は「三角」で「下は白」なのだな。と。
(と知りつつ、味の好みで青えんどうを入れてしまう道草仕様…。)

洋菓子にも(広く言えばどんなものの歴史にも)言えることですが、
「由来」とはとても複雑に織り重なった情報で、簡単に「正解」と
言えるものが見つかるものではなく、その「謎」がまた深く面白く、
ワクワクする理由のひとつでもあるように思います。

水無月もまた、歴史や由来もとても興味深いお菓子です。
もしよろしければ、詳細はこちらにて、ぜひ…☆
 ▶ 語源由来辞典【水無月】の項


☆追伸☆

岐阜ならではの夏越のお菓子といえば、
羽島市と笠松町でこの時期のみに販売される
「みそぎ団子」があります。

歯切れのよい上新粉のお餅で甘さ控えめのこしあんを包み、
表面には甘塩っぱい味噌を塗って炭火で焼き、胡麻を散らした
このお菓子、言葉で勧めるだけだと十人中九人に首を傾げられて
しまうのですが(私が説明下手なのも大きな理由のひとつ…)、
食べた人からは、結構な割合で「また食べたいと思った」という
嬉しい感想をもらいます。

岐南町のお隣、笠松町では、6月末の一日だけ作られるという
超限定のみそぎ団子もあり、こちらもぜひ。と、思います。
(バイトの休みと重なった年こそ、焼き立てを食べに行きます…!)


司書時代の先輩に最初に教えていただいたお店でもあり、我が家は
羽島市の兎月園さんのものがいちばん馴染み深いですが、
この時期は羽島市のあちこちの和菓子屋さんで作られるので、
休日に車で走り、食べ比べをするのもまた、楽しかったです。

冷凍発送もされていますし、お持ち帰りしてトースタで焼き直しても
十分に美味しいのですが(中の餡がとても熱いので、火傷注意です☆)、
もし機会がありましたら、ぜひとも店頭で、焼き立てを、ぜひ…!

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