Heavy or Light?

2023年4月23日

昨日の営業日にはちょっとした試みとして、新生姜のスパイスケーキ(新作)を「重め」と「軽め」の2種類のタイプでご用意させていただきました。

気温が上がり、スッキリ爽やかな飲みものが喜ばれる季節になると、当店では
冷たいドリンク用・炭酸割り用の自家製シロップを仕込み始めます。

毎年作っているのは、寒い時期のものから順に、
柑橘系(※)シロップ→生姜シロップ→完熟梅シロップ≒赤紫蘇シロップの4種類。
(※レモン・柚子・夏みかん・八朔…等々、年により様々です。)

今年は暑くなるのも早そうなので、例年より少し早めに新生姜シロップを仕込み始めました。
(※余談になりますが、冬の最中に生姜湯をお出ししているときはヒネ生姜に唐辛子を多めに加え、ピリ辛・スパイシーに作っています)。

新生姜シロップの場合、濾した液体は主にジンジャーエール用に。
濾された千切りの生姜煮は爽やかでありつつ辛さ控えめなので、ジンジャーエールに加えるほか、おやつにもそのまま焼き込みます。
今年は主にケーキの具材として、4月後半から時々登場いたします。

さて、この新生姜のバターケーキの食感が、今回の揺れどころでした。

生地自体については、試作の段階で一番生姜の風味が生きると感じた2種類――サラサラホロホロとした食感のドイツ菓子「サンドケーキ」をアレンジした軽めのものと、もっちりとした食感のイギリス菓子「ジンジャーブレッド」をアレンジした重めのもの――まで絞り込みましたが、同ジャンル(共にバターケーキ)でありつつ見事に両極端の魅力をもつこの2種類。どちらのレシピも美味しく仕上がった分(けれど、毎週両方ご用意することは諸々難しい個性派ケーキでもあり……)、恥ずかしながら最終選択に迷いに迷いまして。

レシピ自体は完成したものの、はてさてどうしたものか。と悩んだ末、一回は両方をメニューに加えてみて、人気のある方を今季の定番としよう。と決めました。

バターケーキは、お国柄や材料によっても随分印象の変わるケーキです。
おそらく最もポピュラーかつ基本とされるのは、「カトル・カール(QUATRE-QUARTS:仏)」とも「パウンドケーキ(POUND-CAKE:英)」とも呼ばれる、小麦粉・砂糖・卵・バターを4分の1ずつ配合したレシピではないでしょうか。

また、この基本材料4つの配合のバランスを変えたり、アーモンド粉や澱粉や別の穀物の粉などを加えたり、あらかじめ荒挽きの粉やナッツを型にまぶしておいたり、上にトッピングして焼いたり、具として混ぜ込んだり、果物を並べて焼き込んだり、焼き上がったところにシロップやお酒を染み込ませたり、スライスしてからジャムやクリームやゼリー(!)を挟んだり…等々の様々な工夫をすることで、どこまでもバリエーションを増やしていける、奥の深いケーキです。
(…またぞろ長くなり始めたので、詳細は、また後日別記事にて…☆)

兎にも角にも、バターケーキのレシピは多種多様。各国「に」星の数ほどあるのでは。と思われるほど。

実際、今回参考にした「サンドクーヘン」も「ジンジャーブレッド」も、どちらもとても美味しい生地なのですが、どちらがより喜ばれるか…は(好みにもよりますし)予測しきれないほど、両極端な2種でもありました。

さて、「選択も、時には運とタイミング…!」とばかりに、ひそかにドキドキしつつ蓋を開けた昨日の営業日。
おかげさまでご来店にも恵まれて、ケーキも旅立っていきました。

結果としては、テイクアウト分の人気でも、食べ比べを楽しんでくださったお客さまよりお帰りの際にいただいたご感想でも、(僅差ではありましたが)「しっとりイギリス風(食感重め)」に軍配が上がり、今季はこちらのレシピにてご用意させていただくこととしました。

新生姜と発酵バターとスパイス入りの生地にじわじわゆっくりと火を通し、焼き立て熱々の内に型から外して満遍なくジンジャーシロップを染み込ませた、しっとりなめらかな食感のバターケーキです。
当店のラインナップの中でも特に素朴でこぢんまりとした姿ですが、濃いめの生地の中で新生姜がしっかり主張し、スパイスとレモンの香りが追いかける、大人向けの爽やかなケーキとなっています。
今後やって来る湿度高めの日や、夏のように暑い日にもおすすめです。
お楽しみいただけましたら幸いです。

(※サンドクーヘン風のホロホロ食感を生かした新メニューもまた、どこかでご用意できたら。と考えています。こちらもどうぞ、お楽しみに…☆)


追記:

今回のタイトルは、紅茶の好みを問う“strong or weak?”によせて。
味の好みはお客さまそれぞれにあり、もちろんいずれの答えも「正解」です。
お茶の時間を楽しく過ごすため、相手の希望を知ること・伝えること・応えることは、忖度ではなくコミュニケーション。素直に「好き」を聞ける/伝えられるのは、そこに信頼があるからこそ。
共に楽しみたい気持ちが重なるお茶の世界のこの短い問い掛けが、私はとても好きです。

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