軽く軽くシマシマに

2023年4月12日

今月のケーキは、カーディナルです。

黄色と白の縞模様に絞り出したサクサクふわっふわの生地で、
口溶けの良いコーヒークリームを挟んでいます。
縦にも横にもシマシマの、見た目にも楽しいケーキです。

正式名は「カーディナルシュニッテン」というウィーン菓子です。
カーディナルの由来は、黄色と白の縞模様がカトリックの色(ひいては、枢機卿(Kardinal:独/Cardinal:英)の帯の色)から来ている。とする説が有名です。

また、シュニッテン(Schnitten:独)は、ドイツ語で長方形のケーキを示します。「切り菓子」や「小口切り」の訳もあり、放射状に切る丸型のケーキ(トルテ※)と区別する意味があるようです。

※レシピを見ていると、ドイツ菓子やウィーン菓子では角型のケーキを「~シュニッテン」丸型のケーキを「~トルテ」と呼ぶことが多いようです。なお、「~クーヘン」は、焼きっぱなしのケーキや、パイ系のお菓子に多いようです。
(例:ザッハトルテや、シュバルツバルターキルシュトルテ(黒い森のケーキ)etc./バウムクーヘンや、ケーニヒスクーヘン…etc.)

さて、当店のカーディナルに話を戻しまして。
(下記は、店頭配布中の月報46号と一部重複します)
喫茶室でこのケーキをご提供するようになって、かれこれ八年経ちました。おかげさまで、毎年春になると「そろそろですか?」とお尋ねをいただく定番ケーキのひとつとなりました。(いつもありがとうございますー!)

初登場以来、毎年大体三月~四月にご用意しておりましたが、昨年からは三月に「プリマヴェラ」をお出しするようになったため、4月~5月前半のケーキとなりました。

白と黄色の縞々生地は、コシが強めのメレンゲ生地と卵黄多めのスポンジ生地を交互に絞り出して焼き上げています。
表面にたっぷり粉砂糖を振ってからオーブンに入れるため、生地の表面はカリカリサクサクに。内側はふわふわシュワシュワの食感になり、なめらかで柔らかなコーヒークリームと組み合わさると、どこまでも軽いケーキに仕上がります。

余談ですが、本国ではクリームが一般的でなかった昔には、木苺などの赤いジャムを挟んでいた歴史もあり。「赤」もまたカトリックでは重要な色の筈なので、改めてこのケーキと宗教の歴史にも思いを馳せつつ…。(こちらもまた、いずれじっくり調べてみたいお菓子の歴史項目のひとつです。)

生地には、香り付けと爽やかさを出すために、白い生地にレモン果汁を。黄色い生地にレモン果皮をそれぞれ加えています。(そもそもは臭み消しの意図があったようで、お酢を加えたり、お塩を加えたりするレシピもありました。当店では生食できる新鮮な玉子を使っているので、臭み消しというよりは、ほんのり香る爽やかさを狙ってレモンを加えています)。

クリームには、喫茶でお出ししている珈琲と同じ二三味珈琲さんの深煎り珈琲(珈琲ゼリーとは別の銘柄です)を濃い目に抽出したエキスとラム酒を加え、やや大人向けのホロ苦仕立てにしています。脂肪分控えめのクリームを使い、ほんの少しゼラチンも加えてムース仕立てにしているので、ボリュームがありつつ軽い口当たりになっています。

蛇足ですが、作り始めた頃と現在とで当店のカーディナルで変わった点は、元レシピより若干ラム酒の香りが強めなこと(店主は自覚のある呑助です)と、生地に使用する香り付けのレモンが自家製になったことかもしれません。木々の恵みとは、しみじみありがたいです。
(お茶屋さんから新茶が届く時期になると、お茶のお菓子に変わっていきます☆)

ふわふわ軽い春の定番ケーキ、今年もあと数週ご用意させていただきます。
サクサクシュワッと軽い生地で、ふわふわホロ苦の珈琲クリームを挟んだ当店のカーディナル。見た目はどーんとしていて「食べきれるかしら…」と心配されるお客さまもいらっしゃるくらい厚切りの、昔ながらの素朴なブッセのようなケーキですが、ひと口召し上がっていただくと驚かれるほどに淡い食感の、ふんわり軽いケーキです。

先週の営業日には、お皿を下げる際に「大きすぎるかと思ったけど、食べ切れちゃいました。もう一個いけそうなくらいふわふわで…」と、楽しそうに、ちょっと驚いたように、笑顔で感想を寄せてくださるお客さまもいらっしゃいました。とても、嬉しかったです。

今年のカーディナルは、五月の上旬頃までを予定しています。
お楽しみいただけましたら幸いです。

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